7月1日から、予選ラウンドが始まったシドニー国際ピアノコンクールは、オーストラリアで最も権威のあるピアノのコンクール。1977年に始まり、1988年以降、4年おきに開催されてきました。
昨年のコンクールはパンデミックにより今年へと延期されましたが、閉鎖された国境と、先行きが見えない状況により、昨年末の時点で、同コンクールとしては初めて、オンラインでの開催が決断されていました。
オーストラリアや日本、ロシアなど、14ヵ国から選ばれた32人のピアニストたちは、観客を前にしたライブ演奏ではなく、事前に録画した動画によるエントリーとなりました。
同コンクールのアーティスティック・ダイレクター、ピエール・レーン氏は、「285人から選抜された32人のピアニストは、オンラインならではの、数々の予想外の課題をクリアして、応募したプログラムとはまったく異なるものを考案することになりました。しかし、結果は見事なもので、何年にもわたって話題を呼ぶこととなるでしょう」と述べています。
質の高い放送基準と、正確でフェアな審査のため、録画はコンクールの関係者がオンライン上でチェックを入れる中、ワンテイクで撮影されたほか、複数のカメラアングルを設けるなど、細かい要件が敷かれています。
オーストリア在住の仁田原祐さんにとって、デジタル形式でのコンクールは今回が初めてとなります。オンライン・コンクールは、「自分の世界に集中できる」という利点がある一方で、普段はその場の雰囲気を感じ取って演奏するため、「気持ちを高めるパワーが必要であった」という仁田原さん。観客がいないなか、どのようにライブ感覚を持って演奏するかが、課題でもあったと言います。
Source: Yu Nitahara
ピアノを弾く上で普段から大事にしているのは「自分が弾く意味をしっかりと伝える」こと。伝統の上に成り立っているクラシック音楽は、「作曲家がどのような曲を書き、どのような感情を伝えたかったか」ということが大切とする一方で、そこに「自分にしかできないことをプラス」できるような演奏にしたいと語ります。
オーストリアは現在、コロナの状況が落ち着きつつあるものの、学校でクラスターが発生し、閉鎖されたこともありました。自宅にピアノがなく、練習ができない時期もありましたが、そんななか完成した今回の録画は、映像を通していかに観客に思いを届けられるかと、試行錯誤が重ねられたものです。
今回のコンクールには仁田原さんの他に、2人の日本人ピアニスト、太田糸音さんと崎谷明弘さんも参加されています。
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「自分が弾く意味をしっかりと伝えたい」シドニー国際ピアノ・コンクール 仁田原 祐さん
SBS Japanese
06/07/202111:44
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