一人でも多くの日本人にアボリジナルアートの魅力を伝えたい 内田真弓さん 後編

Aboriginal Art Coordinator Mayumi Uchida

Source: Mayumi Uchida

「私の役どころはゼロからイチにすること」。リビングルームの一角から始まった内田さんの活動は、いまや国立美術館を舞台に繰り広げられるようになりました。


アボリジナルアート・コーディネーターの内田真弓さんが、オーストラリアの中央砂漠で自らセレクトした先住民アートを片手に、日本全国を駆け巡ったのが90年代後半のこと。しかし、アボリジナルアートが認知されていなかった当時は、そのアートを展示してくれるところはありませんでした。
「どこも明るく門前払いでした」と振り返る内田さんが日本で初めて開催した展示会は、知人のリビングルームからでした。

「リビングルームの一角を借りて、自分の知っている人だけをお招きし、作品をみてもらいました」

しかし、彼女のそんな地道な活動は、いつしか人から人へとつながり、その舞台も百貨店やギャラリーなど、アボリジナルアートは徐々に大きな舞台で紹介されるようになりました。

「私の役どころはゼロからイチにすることです」と語る内田さんは、日本におけるアボリジナルアートの認知を実感し、活動に手応えを感じています。
Aboriginal Art Coordinator Mayumi Uchida
Source: Mayumi Uchida
アボリジナルアートについて問い合わせが増えたほか、2008年には当時日本では無名であった、先住民画家エミリー・カーメ・ウングワレーさんの大々的な展覧会「エミリー・ウングワレー展 アボリジニが生んだ天才画家」を大阪、ならびに東京国立美術館で開催するための、橋渡しを務めるなど、確かな功績を残します。

アボリジナルアートが「純粋に美しい芸術」という内田さんは、美術の教育を受けていない先住民の人々が描き出す、そのアートはもとより、画家たちと直接触れ合うことで、彼ら自身の魅力にも惹かれてきたと述べます。
Aboriginal Art Coordinator Mayumi Uchida
Source: Mayumi Uchida
文字を持たない先住民の人々にとって、部族の大事な情報や掟を伝承するためのひとつの手段であったのがアート。それらは砂地や壁画、自らのボディに描かれ、代々伝えられてきました。アートして鑑賞されるようになったのは1971年頃からであると、内田さんは語ります。

「現代美術なのに描かれているのは、何千万年も前からのストーリー」

何も変わることなく今日まで伝えられてきたことに「ロマンを感じる」という内田さんは、アボリジナルの居住区を訪れる際には、「リスペクト」を大切にしています。

「部外者は興味本位であれこれ聞かない」、「居住区にあるそれぞれのルールをおかなさい」、これを必ず守ってきました。
Aboriginal Art Coordinator Mayumi Uchida
Source: Mayumi Uchida
国境が再開し、またかつてのようにオーストラリアの中央砂漠と日本を行き来できるようになる日が待ち遠しいという内田さん。これまでと変わることなく、「これだ!」と思う作品を自ら探し、オーストラリアに暮らす一人の日本人として、日本とオーストラリアとの橋渡しのような活動を今後も続けたいと語ります。
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From lounge room exhibition to National Museum: Mayumi Uchida and Aboriginal Art  Part 1 image

一人でも多くの日本人にアボリジナルアートの魅力を伝えたい 内田真弓さん 前編

SBS Japanese

01/06/202114:04
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From lounge room exhibition to National Museum: Mayumi Uchida and Aboriginal Art Part 2 image

一人でも多くの日本人にアボリジナルアートの魅力を伝えたい 内田真弓さん 後編

SBS Japanese

08/06/202114:20
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