Key Points
- 手のひらにピリピリとした感覚を感じたメリッサ・ガーディナーさん。実は知らず知らずのうちに心臓発作を起こしていました
- モナッシュ大学の新しい報告書によると、ガーディナーさんと同じように、オーストラリア人の5人に1人が心臓発作の症状を挙げることができないことが明らかになりました
- 現在では、どのような兆候に注意すべきかを知ってもらうために、より的を絞った啓発が行われています
メリッサ・ガーディナーさんは、約2年前のある夜、居心地の悪いうっすらとした痛みで目を覚ました。
「手のひらに軽い違和感があり、ピリピリするような感じでした」
当時52歳だったメリッサさんは、それが深刻なものだとは思いませんでしたが、気になったため、迷いに迷ったあげく午前1時30分頃にヘルスファーストのホットラインに電話をしました。
するとオペレーターは、すぐに救急車を呼ぶよう指示しました。
Melissa Gardiner suffered a heart attack in 2021 after feeling a tingling sensation in her palm. Source: Supplied / Melissa Gardiner
オペレターが過剰反応を起こしていると思い、初めは断っていたメリッサさんですが、実はそれが心臓発作を起こしている症状であることにあとから気づきました。
「病院に行ったら心臓発作を起こしていると言われました。とても怖かったです」
心臓発作の症状を挙げられますか?
心臓発作を特定できないというガーディナーさんの経験は、決して珍しいものではありません。
先月発表されたモナッシュ大学率いる新たな研究によると、オーストラリア人の5人に1人が心臓発作の症状を挙げることができないことが明らかになりました。
この研究は2010年から2020年にかけて10万1,936人のオーストラリア人を対象に行われ、2010年に発表された3年間のナショナル・ハート・ファンデーション・キャンペーン、「心臓発作の警告サイン」の有効性も探りました。
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その結果、胸痛が心臓発作の症状であることを認識している人が減っていることがわかりました。意識は2010年の80%から2020年には57%に低下しました。
また、症状をひとつも挙げられないという回答者の割合は、4%から20%に急増しています。
報告書の筆頭筆者であるモナシュ大学のジャネット・ブレイ准教授は、人々が警告サインを認識し、すぐに助けを得られるようにすることが重要であると述べています。
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「心臓発作を起こしたときに、自分の症状を心臓に起因するものと考えている人は、より早く病院に到着することがわかっているので、これは極めて重要なことです」
「また心臓発作を起こしたとき、人は誰かに電話をかける傾向があります。ですから、大切な人から『こんな症状があるんだけど、どうしたらいいと思う』と電話がかかってきたときのために、症状を知っておくことは重要です」。
心臓発作の一般的な症状
オーストラリアでは毎年5万6,700人のオーストラリア人が心臓発作や狭心症(心臓への血流が悪くなることで起こる別のタイプの胸痛)に悩まされており、25人に1人の割合で死亡しています。
心臓発作の主な兆候は、胸、腕、肩、背中、首、顎の痛みや圧迫感、締め付け感で、息切れやめまい、疲労感を伴うこともあります。
ブレイ教授によると、この研究では、2010年のキャンペーンが有効でなかったグループを特定し、その理由を解明しようとしているとのことです。
Janet Bray is an associate professor at Monash University's School of Public Health and Preventive Medicine. Credit: Monash University / Janet Bray
ターゲットを絞った試み
この驚くべき結果を受けて、モナッシュ大学では、2010年のキャンペーンの教訓を活かし、心臓発作に関する新たな啓発キャンペーンを実施し、最も情報を必要としている人々に情報を届けることにしました。
2010年のキャンペーンには1,600万ドルの費用がかかり、ブレイ教授も「非政府組織には手の届かないプロジェクトだった」と認めています。
今回は、心臓発作の発生率が高く、心血管系の知識が少なく、救急車の利用が少ない、リスクの高い8つのローカルガバメントエリアを対象に、「Heart Matters」という新しい試みを実施します。
「私たちは、文化的、言語的に多様な人々を含むコミュニティグループに対して、それぞれに合った教育を提供しようとしています 」
ナショナル・ハート・ファンデーション、ビクトリア州救急車局、ビクトリア州政府保健局の共同で行われるこのプログラムは、英語以外の言語を話す人を含め、すべての人が利用できるものであると、ナショナル・ハート・ファンデーションのチーフメディカルアドバイザー、ギャリー・ジェニングズ氏は話します。
「人々はさまざまな情報源から情報を得るので、地域のリーダーを通して活動することが重要です」とジェニングズ氏は言います。
気をつけたい女性特有の症状
心臓発作の最も一般的な症状は胸痛ですが、女性は吐き気や疲労感、息切れ、冷や汗、顎・肩・腕・背中の痛みや不快感など、胸痛以外の症状を経験する可能性が高くなります。
これらの症状は、インフルエンザや過労、消化不良などの症状と間違われることが多いようです。
心臓発作を起こしたガーディナーさんの動脈は90%閉塞していたことがわかり、それを広げるステントを入れる手術を行う必要がありました。
ガーディナーさんは心臓発作からわずか3週間後、父親を心筋梗塞で失いました。
ガーディナーさんは心臓発作は自分のような女性にとっての問題ではないと思い込んでいたため、心臓発作の可能性を疑うことはなかったと言います。
「女性では症状が異なり、しかも軽いとは思いもしませんでした」
「(電話をかけていなかったら)ただ我慢して過ごしていたと思います」
「(症状を)無視しないでください。検査を受けるのにお金はかかりません。病院があなたを追い返すようなことはありません」
火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!
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