オーストラリアでは抗議する権利が認められていると、広く考えられていますが、この権利は憲法には明記されていません。
その代わり、オーストラリアでは憲法上、政治的表現の自由が認められています。
ニューサウスウェールズ大学・法学部のルーク・マクナマラ教授によると、ビクトリア州、ACT、クイーンズランド州など、ごく一部の州やテリトリーでは、人権法に基づいて平和的な集会の権利が明示されていると言います。
「国内のほとんどの地域では、抗議する特定の場所が指定されているわけではありません。しかし私たちはコモンローの伝統の一部として、抗議する権利という考えを受け入れているのです。」
抗議に関する法律はオーストラリア全土で異なり、例えばクイーンズランド州や西オーストラリア州のように鉱業が巨大産業で、多くの人々の注目を集めている州では、抗議活動に対する法律が厳格化されています。
抗議に関する法律は、広範で曖昧な場合があります。
抗議行動に参加すること自体が告発の対象にはなりませんが、抗議行動中の不適切な行動に対しては告発される可能性があります。
TOPSHOT - Protestors march on the streets of Sydney's central business district against US President Donald Trump's travel ban policy on February 4, 2017. Source: AFP / SAEED KHAN/AFP via Getty Images
容認できない行動とは?
他人に危害を与えたり、器物を損壊したりするような反社会的行動は容認されません。マクナマラ教授によると、何が許容されるかは程度の問題であると説明します。
「行動はケースバイケースで評価されます。例えば、デモ行進であれ、座り込みであれ、立てこもりであれ、特定の抗議活動の可否は、その場で警察官によって評価されるのです。」
アムネスティ・インターナショナルのキャンペーン担当者であるニキータ・ホワイトさんによると、抗議活動に関連するバナーやポスター、芸術作品などは携行することができますが、武器とみなされる可能性のあるものは携行してはならないと警告します。
「ナイフや照明弾などのアイテムは、検査される可能性があるため持ち込むべきではありません。」
抗議行動による混乱
多くの人々が、街頭デモや行進による日常生活の混乱を経験したことがあるでしょう。これは政府にとって大きな圧力となり、時には新たな規制を導入するきっかけになることもあります。
マクナマラ教授は、私たちが抗議の権利を守るためには、生活の中断をある程度受け入れる必要もあると考えています。
抗議活動に混乱はつきものだと言えますProfessor Luke McNamara, Faculty of Law and Justice, UNSW
「公共の場での抗議活動の目的は、人々の注目を引き、考えさせ、伝えられているメッセージに耳を傾けるよう促すことです。」
それは二極化した問題と言えますが、各州やテリトリーでは、大きな混乱を引き起こした人々に対して、独自の罰則を課しています。
しかし、オーストラリア全土では、主要な港や道路、伐採地などで行われる、重要な業務を妨げるような抗議活動や、通勤の妨害は、反抗議法の対象となる可能性があります。
MELBOURNE, AUSTRALIA - AUGUST 21: A man holds a banner reading "Freedom" atop a tram stop during an anti-lockdown protest on August 21, 2021 in Melbourne, Australia. Credit: Getty Images
また南オーストラリア州では現在、公共の場での妨害行為に対して最も厳しい罰金を課しており、違反者には最高で3ヶ月の実刑判決が下されていると、説明します。
「これはとても幅広い法律なので、路上やビル前、国会前での抗議行動もこの法律に引っかかる可能性があります。」。
またオーストラリアでは妨害行為のほかにも、不法侵入、変装しての抗議、救急隊員の妨害、脅迫的・攻撃的な言葉の使用、器物損壊などの罪が抗議活動において一般的です。
しかし実際、逮捕にまで至るのは、建物に立てこもったり、橋の上から横断幕を広げるなど、極端な反社会的行動をとった抗議者だけです。
法律の強化
モルズ准教授によれば、人権法律センターは過去20年間に34件の抗議法案、または法律を改正しようとする試みを報告しており、その26件が可決。
抗議することが事実上、難しくなってきています。
「全体として、抗議活動を犯罪化する傾向にあると言えるでしょう。オーストラリアのほとんどの場所で見られるのは、犯罪とされる行為が特定の場所で起こるということです。」
抗議許可を得る
オーストラリアで抗議活動をする上で重要なのは、正式な許可を得ることです。
大規模な集会を計画している場合、警察またはローカル・ガバメントに手紙を書いて許可を求めることができます。
許可された集会では、警察が抗議活動を中止するために使う可能性のある権限の一部が免除されると、マクナマラ教授は説明します。
「例えば、許可された抗議活動や監視下にある行進の場合、一定期間の交通妨害は許されます。」
許可された抗議行動であれば、警察が介入したり、群衆が移動させられたりすることはないという確信が持てる他、逆に、警察が立ち会うことで、抗議活動が円滑に行われ、参加者の安全も確保されます。
SYDNEY, AUSTRALIA - MAY 06: Climate activists march through the CBD during the 'School Strike 4 Climate' on May 06, 2022 in Sydney, Australia. Credit: Lisa Maree Williams/Getty Images
警察に拘束されたら?
拘束されたら、まずは弁護士に連絡してください。
またコミュニティー・リーガル・センターは法的助言を提供し、あなたの権利が尊重されていることを確認してくれます。
抗議に関連する罪のほとんどは、懲役刑ではなく罰金刑であり、罰金は通常、数百ドル以下であるとモルズ准教授は言います。
私たちは幸いなことに、警察や検察、裁判官が抗議の自由を本当に大切にしている社会に生きているため、重い罰則を適用していませんDr Sarah Moulds, Associate Professor, Law, University of South Australia
自分の権利を知る
オーストラリア全土における抗議活動と法律に関する正確な情報は、や、ローカルカウンシルの自由人権協会などの組織から得ることができます。
SBSの日本語放送は火木金の午後1時からSBS3で生放送!
火木土の夜10時からはおやすみ前にSBS1で再放送が聴けます。
から過去のストーリーを聴くこともできます。