オーストラリアの教育制度は州によって異なりますが、ニューサウスウェールズ州では、日本のセンター試験に相当するHSC(Higher School Certificate)があり、この試験結果と学校の成績をあわせて、学力ランキング、ATAR(Australian Tertiary Admission Rank)が決まります。
HSCの勉強は11年生から始まり、必修科目である英語に加え、幅広い科目の中から規定ユニット分の科目を選択することができます。
提供されている科目は学校によって異なりますが、州内でオファーされている言語コースは、それぞれのレベル(ビギナーズ、コンティニュアズ+エキステンション、イン・コンテクスト)を含めると66種類に上ります。
しかし、これまで日本語、中国語、韓国語、インドネシア語の4つのアジア言語におけるコンティニュアズ・コースでは、他の言語と一貫性のない履修基準が設けられていることが長年問題視されてきました。
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日系生徒に「不利」なHSC、コミュニティーが懸念
2007年に発足されたHSC日本語委員会は、この制度の撤廃を目標に、約14年間に渡り活動を行ってきましたが、今年5月、委員会が最も重点を置いていた履修基準の一部(下記3番目)の削除が発表されました。
コンティニュアズ・コースのこれまでの履修条件(参考:HSC日本語委員会ウェブサイト)
- 当該言語を指導言語として用いる学校で、小学校初年度(1年生)以降の正式教育を1年以上受けたことがないこと
- 当該言語がコミュニケーションの手段である国において、過去10年間に3年以上在住していないこと
- 当該言語のバックグラウンドを持つ者との教室外での持続的なコミュニケーションに、当該言語を用いていないこと
HSC日本語委員会の初代会長でもあるメンバーの嶋田典子さんは、今回の改訂について「頭の上にずっとあった黒い雲がなくなったようで、本当に嬉しい」と語ります。
また同じく、長年に渡り委員会で活動を行ってきた神代典子さんは、「不公平な内容で、完全に差別とも思われる基準」がなくなったのは「大きな進歩」であると説明します。
この3番目の履修基準により、これまで生徒の能力に関係なく、「保護者の一人が日本人である」という事実だけで、「家庭では常時日本語で会話をしている」と判断され、コンティニュアズ・コースを受けることができない生徒が多く存在しました。またこれらの生徒の能力では、その上のコースであるイン・コンテクストは難しく、結果ハイスクールで日本語を学ぶことを諦めざるを得ませんでした。
神代さんの3人の息子さんも、コンティニュアズ・コースを受けることを望んでいたものの、受けることができませんでした。このほどの改訂は、次世代の日系の子供たちが日本語を学べる環境がより整ったことを意味するほか、マルチカルチャルであるオーストラリアの未来にとっても、素晴らしい前進になったと話します。
Poster presented at the FECCA conference in Melbourne, June 2022 Source: HSC Japanese Committee Inc.
嶋田さんと神代さんのフルインタビューは下記からどうぞ
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日系の子供たちのために活動して14年 HSC ジャパニーズ履修基準改訂へ
SBS Japanese
27/07/202213:33
火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!