「英国製の自動車やスコッチウィスキーはより安くなり、オーストラリアの農産物がイギリスの店頭に並ぶ機会が増えるでしょう」。ロンドンでボリス・ジョンソン首相と自由貿易協定(FTA)を締結したスコット・モリソン首相が述べました。
「私は納得できる内容を待つと言いましたが、イギリスとオーストラリアの間でその納得できる内容に到達した」と語りました。
モリソン首相は15日朝、ロンドンのダウニング・ストリート10番地で、ジョンション首相と前日の夕食時にFTAを原則合意したと記者団に発表。
「この合意により、両国の経済はより強化されるでしょう。これは、オーストラリアが締結した協定の中で最も包括的で野心的なものです」と述べました。
ジョンソン首相は協定について、「これはティムタムの代わりにペンギンを、ベジマイトの代わりにマーマイトを、バーバリーとマッキントッシュの代わりにRMウィリアムズ・ジャパラス*を交換するようなもの」とジョークを飛ばしました。
*ブッシュウォークなどに着るアウトドアジャケット
この協定により、より多くのオーストラリア人がイギリスに住むことが可能となるほか、働く道も開かれ、輸出業者にはより多くの市場が切り開かれることになります。
また、イギリス人バックパッカーがビザを延長する条件として義務付けられていた、オーストラリアの農場で80日間働く制度も廃止されます。
協定の文面はまだ最終決定されておらず、両国の議会でそれぞれ承認される必要があります。
スコットランドのアイバン・マッキー貿易相は、15日朝、ウェールズと北アイルランドの大臣とともに英国政府から協定について説明を受ける予定だったが、「『協定の内容が十分に固まっていない』とし、連絡はかなり後に延期された」とツイート。
モリソン首相は、自動車やウィスキーなど英国の輸出品に対する関税が直ちに撤廃されるため、オーストラリアの消費者はより安価な製品の恩恵を受けることになると述べました。
「イギリスはオーストラリアからの輸入を自由化し、オーストラリア産のワインや短・中粒種の精米を含む、99%のオーストラリア製品がイギリスに無税で入ることになります」と述べています。
一方で、オーストラリア産の牛肉と羊肉の輸入関税は、オーストラリア産の安価な農産物に押されてしまうことを懸念したイギリス農家の強い要望により、15年かけて段階的に撤廃されていきます。
ジョンソン首相は「ジェイコブズ・クリークやハーディーズなど、オーストラリアの人気ワイン、水泳着、菓子類」の費用が軽減されることをイギリス人は心待ちにしていると述べました。
オーストラリアはイギリスで製造された自動車やスコッチウィスキーに対する最大5%の関税を撤廃します。
業界団体によると、イギリスは2019年にオーストラリアに2万台の自動車を輸出しているほか、スコッチウィスキーは第8位の市場となっているます。
ビジネス・カウンシル・オブ・オーストラリアのジェニファー・ウェストコットCEOは、オーストラリアの輸出業者が約50年間にわたって英国市場から事実上締め出されていたことを考えると、今回の「記録的な取引は」大きな勝利であると述べました。
「オーストラリアは、イギリスのブレグジット後の最も野心的な貿易パートナーになることを目指し、先頭に立って進んでいます」と声明で述べました。
一方、オーストラリアのデービッド・リトルプラウド農業相は、英国市民に課せられていたワーキング・ホリデー・ビザを廃止するという決定により、季節労働者が1万人減少すると述べ、今後3ヵ月以内に新たな農業ビザの発表があると示唆しました。この新たなビザの対象となるのは、タイ、カンボジア、ブルネイ、ミャンマー、フィリピン、マレーシア、ラオス、ベトナム、シンガポール、インドネシアのASEAN10ヵ国の市民です。
モリソン首相はウィンザー城でエリザベス女王とも面会。女王がバーチャルではなく、直接謁見する様子が撮影されたのは、イギリスで1回目のロックダウンが行われる直前の2020年3月でした。
首相は15日午後、エマニュエル・マクロン大統領との会談のため、フランスに向けて出発しました。
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