オーストラリア東海岸のコアラがはじめて「脆弱」と指定されてからこの10年間で、連邦政府が2万5000ヘクタールにもおよぶコアラの生息地の破壊を承認していたことが、新たな分析で明らかになりました。
オーストラリア自然保護財団(ACF)によると、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ACTを中心とする63の鉱山プロジェクトが承認されており、平均的な住宅地の52万6,000ブロック分、またはシドニー・クリケット・グラウンド約1万400個分に相当する生息地が破壊されていることもわかりました。オーストラリア自然保護財団の活動家であるバシャ・スタサック氏によると、東海岸のコアラが連邦環境保護・生物多様性保全法(EPBC)に基づき「脆弱」に指定された2012年以降、政府によって承認された生息地の破壊は毎年増加しています。
Veterinarian checking a koala. Source: Pexel/International Fund for Animal Welfare
またコアラの生息地に入り、破壊する許可を得たプロジェクトのうち、61%は鉱業、12%は輸送、11%は住宅であることもわかりました。
一方で、許可されたすべての開墾が実際に行われたかどうかを確認することは困難であるとスタサック氏は述べています。
しかし、農業のための伐採は国の環境法でほとんど査定されていないほか、原生林の伐採は禁じられているため、2万5,000ヘクタールという数字が「過小評価であることは確か」とスタサック氏は言います。
「連邦政府はコアラのために 5,000 万ドルの投資を約束したばかりですが、同時にコアラの生息地を鉱山や道路、宅地として切り開くことを故意に許可し続けているのです」
「連邦政府と州政府がコアラのために最初にすべきことは、商業プロジェクトのためにコアラの生息地を破壊することを今すぐ止めることです」
絶滅危惧種の専門家らが、コアラを「脆弱」から「絶滅危惧種」に引き上げるよう、勧告していることを受け、スーザン・レイ連邦環境相は、今後1ヵ月以内に、コアラを懸念リストに追加するか検討する見込みです。
レイ連邦環境相のスポークスマンは、EPBC法のもと、有袋類に「重大な影響」を与えるとされるプロジェクトは、コアラの生息地を強化することで相殺しなければならないことを忘れてはならない、と述べています
また、政府がオーストラリア東部全域で害虫や雑草の駆除、植生回復を含む「戦略的」生息地回復プロジェクトを支援している、とも説明。
先ごろ発表されたコアラ保護のための 5,000 万ドルには、大規模な生息地と健康保護プロ ジェクトのための 2,000 万ドルも含まれていると言います。
しかし、ACF は、広範囲に及ぶ生息地の破壊を止め、EPBC 法の抜本的な見直しと強化が必要であるという グラム・サミュエル 氏の査定に政府が従わない限り、東海岸のコアラの見通しは何も変わらないと述べています。2021年に競争監視団が包括的な見直しを行った結果、オーストラリアの自然環境や象徴的な場所は、それを保護するために作られた法律の下で衰退の一途をたどっていると結論付けました。
Minister for the Environment Sussan Ley and Prime Minister Scott Morrison. Source: AAP Image/Mick Tsikas
ニューサウスウェールズ州のコアラの生息数は2001年以降33~61%減少し、ブラック・サマー・ブッシュファイアでは少なくとも6400頭が犠牲になっています。
2020年、ニューサウスウェールズ州議会の調査では、生息地の消失を防ぐために政府が緊急に介入しなければ、コアラは2050年までに絶滅する可能性が高いことが明らかになりました。
クイーンズランド州では、森林伐採、干ばつ、山火事により、2001年以降コアラの生息数が少なくとも50%減少しています。
火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!