タスマニア州ホバートを拠点に活動するアーティスト、ケイ・グリーンさん。
50年前に日本で交換留学をしたときの記憶は、今でも鮮明に残っていると話します。
ホストファミリーであった土井ファミリー、日本での学校生活、琴の音、茶道、そして大晦日に聴いた除夜の鐘など、それらの記憶は今でも簡単に思い出すことができると説明します。
「これらの思い出は、私の人生を豊かにし、洞察力を与え、世界に対する見方や考え方を磨くのに役立っていきました」と、彼女はSBS日本語放送に語ります。
Kaye Green, first on the right, top line. Japan, 1972 Credit: Kaye Green
しかし、グリーンさんはそんな時代背景の中も、幼い頃から、母親から毎日のように日本の話を聴いていたと言います。
1930年代、グリーンさんの母は、横浜の生糸商人を父に持つセツコ・モリさんとシドニーで友達になりました。
「母は(地元の)タスマニアに、セツコさんは日本に、それぞれホームシックになり、お互いの故郷を懐かしみながら、慰め合っていました」
「私は、母が語る2人の友情の物語を聞くのが大好きでした」
「人の肌の色や目の形が気になったことはありません。私にとって、人は人だったのです」とグリーンさんは当時を振り返ります。
Ms Green has kept these photos for her mother's friend, Setsuko, hoping to connect with her children and grandchildren Credit: Kaye Green
しかし、戦争をきっかけに文通は途絶え、再開することはありませんでした。
セツコさんが恋しくなったグリーンさんの母親は、よくセツコさんとの思い出や、彼女から聞いた日本について語るようになりました。
横浜の街並みや着物、繊細な桜の木、狭い道に建つ暗い木造の家、そしてどこかでセツコ・モリという少女を思い浮かべていたのです。ケイ・グリーン
そんな話を聞きながら育ったグリーンさんが、1971年にライオンズクラブの国際青少年交換プログラムで来豪した日本人留学生と親交を深めるのは当然のことでした。
このプログラムは、青少年に文化理解を深める機会を提供するため、1961年に始まりました。
2人の少女は、40年近く前にグリーンさんの母親とセツコさんがそうであったように、とても親しくなりました。
そしてその1年後、高校を卒業したばかりのグリーンさん自身に日本での留学機会が訪れたとき、迷うことなく、日本へと飛び立ちました。
Kaye Green in Japan, 1972 Credit: Kaye Green
「そして時間が経つにつれて、私は心の中で日本人とつながっていると感じただけでなく、自分の体が日本人に見えるとさえ思うようになったのです!日本での1年間は、刺激的で思い出深い経験とともに過ぎていきました」
留学から50年。グリーンさんは今でもその思い出を大切にし、その後の彼女の人生を形作った日本での交換留学の経験に感謝しています。
Kaye Green is an artist based in Hobart, Tasmania Credit: Kaye Green
しかしこれらの物が思い出を蘇らせる一方で、「自分の中にあるもの」の方がより重要で貴重であると話します。
私は、この50年間、アーティストとして、そして何よりも人として、交換留学の恩恵を受けてきたと思います。私は毎日、日本での体験とつながっています。ケイ・グリーン
その思いは、交換留学から50年という節目を迎え、より一層強くなったと言います。
「日本への深い感謝と愛情を、どう表現したらいいのだろう」
先月、グリーンさんはホバートでエキシビション「Bonsai Pilgrimage」を開催。50周年を記念して、50点の盆栽作品を展示しました。
50 bonsai artworks to say thank you to the 50 years, Handmark Gallery, Salamanca, Hobart Credit: Kaye Green
「盆栽の謎めいた性質を明らかにすることは、日本や日本人ぽさがある私の思いと完璧に一致しました。私にとっての盆栽は、美、年齢、哲学、時間、記憶、シンボル、メタファーが小さな木に宿っているのです」
エキシビジョンを訪れた人々は彼女の物語と50の作品に大変惹かれたと言います。
One of the 50 bonsai artwork by Kaye Green Credit: Kaye Green
グリーンさんは何年も前から、セツコさんの家族を探し、その子供や孫とつながることを試みてきました。
「(それができれば)私の日本との物語は完了します」
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