気候変動から見る連邦選挙

主要政党はいずれも、2050年までに排出量実質ゼロを実現することを公約していますが、実際どのように達成するのでしょうか?

Student climate strike Queensland

Students protesting the climate policies of both major parties in Australia Source: AAP

オーストラリア人の約83%が、気候変動や地球温暖化を懸念していることが、最新の気候変動レポ―トにより明らかになりました。

18歳以上の約1,000人を対象にしたイプソスの気候変動レポートによると、60%近くの回答者が、土曜日の投票前に各候補者や政党の自然災害対応政策を見ることになると指摘しました。

その背景には、2019-2020年の壊滅的なブラック・サマー・ブッシュファイヤーなど、国を揺るがした自然災害が挙げられます。東海岸の一部に壊滅的な被害をもたらしたこのブッシュファイヤーでは、数百万ヘクタールが焼失したほか、4,400棟以上の家屋が破壊、33人が火事により死亡したほか、煙の吸引によりさらに450人近くの命が犠牲になりました。

また最近クイーンズランド州南東部とニューサウスウェールズ州沿岸部の一部で発生した大規模な洪水も大きく影響しています。
専門家は、地球温暖化と気候変動の最悪の影響を抑えるためには、排出量の削減が不可欠であると述べています。

主要政党は、2050年までに排出量実質ゼロ、「ネット・ゼロ・エミッション」を達成することを約束していますが、これはオーストラリアが大気から除去する二酸化炭素の量を、少なくとも排出する量と同じにすることを意味します。

では主要政党は実際、どのような計画でその目標達成を目指すのでしょうか?
Concern over the impact of climate change is growing. Here's what the major parties say they'll do to address it
Source: SBS News
連合はオーストラリアの排出量にどう取り組むか

連合は、2050年までに排出量実質ゼロにするという公約を達成するために、「税金ではなく技術」を用いると述べています。

連合は2030年までに26〜28%の排出量削減を公約していますが、政府はこの時期までに30〜35%の排出量削減が可能であると予測しています。

「オーストラリア式ネットゼロ達成計画」では、2030年までに低排出技術に200億ドルの支出を行うことを明記しているほか、新しい燃料源と輸出産業を生み出す水素、低コストの太陽光、低排出の鉄鋼とセメントへの投資などを優先しています。

また、炭素の回収・貯留や隔離による地下への貯留、電気自動車の充電インフラへの投資も計画しています。

2050年までにネットゼロを達成するという政府の目標達成のためには、既存の技術を大規模に展開することが重要とし、今世紀半ばまでに排出量削減の85%に貢献することが期待されています。
しかし、排出量削減の最後の15%を達成するためには、さらに画期的な技術が必要とされており、スコット・モリソン首相は昨年10月、この15パーセントは「初期の技術開発によって生み出された進化と勢いから生まれるだろう」と述べています。

労働党はオーストラリアの排出量にどう取り組むか

労働党は2030年の排出量削減目標を2005年比で43%と公約していますが、これは2019年の連邦選挙で掲げた45%という目標より若干低くなっています。

これは2021年12月に発表された同党の「パワーリング・オーストラリア」計画で明らかにされたもので、2030年の目標によってオーストラリアは「2050年までにネットゼロの軌道に乗る」と述べています。

この目標を達成するために、労働党は電力網を改良するために200億ドルを投資し、より多くの再生可能エネルギーを扱えるようにすることを掲げています。

また労働党は、電気自動車の課税を撤廃することで、価格を2,000ドルから1万2,000ドル引き下げるほか、全国に数百に上るコミュニティーバッテリーを設置するとも述べています。これは屋根に設置される太陽光発電で充電され、最大10万世帯にも共有エネルギーが貯蔵されると言います。

さらには、85の太陽光バンクを設置し、賃貸住宅や低所得世帯など屋上太陽光発電を利用できない2万5000世帯以上に恩恵を与えるとしています。
ELECTION19 BILL SHORTEN CAMPAIGN DAY 21
Mr Shorten visited the SSE Solar Farm outside of Adelaide with Labor's energy spokesman Mark Butler. (AAP) Source: AAP
公共サービス部門も 2030 年までに排出量実質ゼロを達成することが求められていますが、オーストラリア国防軍、オーストラリア連邦警察、オーストラリア国境軍および安全保障機関はその対象外となっています。

労働党はグリーンメタル(グリーンエネルギー技術に使用される鉱物)のようなクリーンエネルギー技術への投資に30億ドルを割り当て、政府のいわゆる「セーフガードメカニズム」を調整することを目指します。

セーフガードメカニズムは、年間二酸化炭素排出量10万トンから時間をかけて徐々に基準を引き下げ、排出量の多い企業にその代償を払わせるものです。オーストラリアビジネス評議会は、この基準を2万5,000トンに引き下げることを提案しており、労働党はこの提案を採用するとしています。

野党のアンソニー・アルバニージー党首は、労働党が政権を獲得した場合、2030年の排出削減目標をさらに強化することは否定しています。

グリーンズ、石炭とガスの廃止を掲げる

一方、グリーンズは、ハングパーラメントで政権を握った場合の交渉のための「希望リスト」を発表し、その中に石炭とガスの廃止を約束しました。

「ここ数ヵ月、そして今週ここクイーンズランドで見たように、気候の危機はさらに悪化しています」と、グリーンズのリーダー、アダム・バント氏は月曜日の夕方に行われた党のキャンペーン発表で述べました。

「私たちはスコット・モリソンを追い出し、この国が直面している大きな問題に対して行動を起こすグリーンズの力を均衡させた議会を選出することができるのです」

バンド氏は火曜日、メタンガスを段階的に削減するため、ジョー・バイデン米国大統領のグローバル・メタン誓約に署名するよう次期政権に求めると発表しました。

メタンは、人為的な地球温暖化の原因として、二酸化炭素に次いで2番目に大きな影響を及ぼしています。

-With additional reporting by Tom Canetti and AAP

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Published 18 May 2022 2:33pm
By David Aidone
Presented by Yumi Oba

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